日時:2025年12月19日(金)18:00~19:45予定(開場17:30)
会場:小野記念講堂
出演:豊竹若太夫(浄瑠璃)、鶴澤清介(三味線)、鶴澤清允(ツレ)
聞き手:児玉竜一(早稲田大学演劇博物館長)
内容:素浄瑠璃『嫗山姥』より廓噺の段
座談会
主催:株式会社コテンゴテン
共催:早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点
・早大生(40席)
参加費:無料 ※定員を超えた場合抽選
申し込み:11月10日(月)10:00~12月8日(月)12:00
結果発表:12月12日(金)
・一般の方(160席)
参加費:5,000円(全席指定・税込) ※先着順
申し込み:11月10日(月)10:00~
※一般席(5,000円・税込)でのお申し込みは、
主催者のWebページhttps://coten-goten.com/からお申し込みください。
【一般のお問い合わせ】コテンゴテン https://coten-goten.com/
※本イベントは、記録・広報のため撮影をいたします。あらかじめご了承くださいますようお願いします。
「嫗山姥」は、正徳2年(1712)7月竹本座上演と推定される全五段の時代物で、作者は近松門左衛門です。源頼光とその四天王を中心に、坂田金時出生譚などを描きますが、今回上演されるのは、二段目切にあたる「兼冬館」です。「八重桐廊話」あるいは「しゃべり山姥」など、いくつかの通称で知られていますが、近年の文楽の通例に従って「廊話の段」としました。
八重桐というのは、女武道の役柄や長セリフの芸で知られた女方の名手、萩野八重桐を踏まえています。萩野八重桐が同じ年の春に、「ひがん桜」で紙衣姿の文売りとなって、男への恨み言を長々と述べるというしゃべりの芸が大当たりを取りました。それをそっくりそのまま浄瑠璃にしたのが、この段前半の聴かせどころ。身分のある者が、身分を隠して市井に紛れて、再興の機会をうかがうという、元禄歌舞伎以来くりかえし親しまれてきた「やつし」の芸を浄瑠璃にして、煙草売りの源七と姿を変えて三味線をつま弾くのは、実は坂田蔵人時行。自分に縁あるその歌を聴いて、文売り(ラブレターの代筆屋)の口上によって館の内に招かれて、夫時行と対面することになるのが八重桐。逃げ隠れする夫への当てつけに、三角関係から遊女の争いとなる廊の騒動を克明に語る、廊を舞台に、歌舞伎と浄瑠璃の芸が行ったり来たりする楽しさを描き出します。
ところが、時行が身をやつしているのは敵討ちのためなのですが、なんと敵討ちはとっくに済んでいた。それを知った時行は自害して、魂は八重桐の胎内に宿って再び生まれ出ようとするという、たいへんな展開になります。
廊を細密に描く描写から、人間わざをこえたスケールまで、語り物としての義太夫節の可能性を存分にお楽しみください。

豊竹若太夫(とよたけ・わかだゆう)
1967年三代竹本春子太夫に入門。祖父・十代豊竹若太夫(人間国宝)の幼名を継ぎ、豊竹英太夫と名乗る。後に四代竹本越路太夫(人間国宝)の門下となり、祖父の血筋と師匠の芸を受け継ぎながら、早くから将来を嘱望される存在となった。八代目綱太夫・三代目春子太夫ら異なる系統の太夫からも稽古を受けた芸歴は、今日の文楽界において極めて貴重である。明治初期から続く名跡・豊竹呂太夫を襲名後、自らの芸と立ち位置を確立し、2024年4月、いよいよ十一代目豊竹若太夫を襲名。竹本義太夫に次く大名跡であり、祖父の名でもある「若太夫」を五十七年ぶりに復活させたことは、芸の継承と新たな時代への決意を象徴するものである。

鶴澤清介(つるざわ・せいすけ)
1973年二代鶴澤道八に入門。翌年、鶴澤清介と名乗り朝日座で初舞台を踏む。剛柔を兼ね備え、古典から新作まで幅広い芸域で作品の魅力を造形してきた。2012年には三谷幸喜作の新作文楽『其礼成心中』の作曲を手がけ、今年は十三年ぶりとなる三谷作品『人形きらい』に取り組み、その手腕を改めて示した。また、近年ではYouTubeでの発言にも取り組み、舞台裏や三味線の魅力を広く伝えている。こうした意欲約な取り組みは文楽の創作面を支える存在としても注目されている。演奏後の座談会では、精妙にして酒脱、どこまでも続くかと思わせる話術で聴衆を魅了し、文楽三味線の奥深さを語る稀有な語り部としても貴車な存在である。



