1950~60 年代中頃にかけて、小山祐士や田中千禾夫、別役実らによって広島・長崎の原爆や被爆者を取り上げた作品が続けざまに生み出された。これは、同時期に文学や映画において原爆が取り上げられたこととも共鳴する。一方で演劇は、原爆投下後の光景や被爆者の痛ましい姿を写実的に示すのには適さない。では、この時期の作家/作品は何を、いかに表象することで、原爆について語ろうとしたのか。
その後も現在に至るまで、原爆や核問題という題材は、野田秀樹を筆頭に幅広い年代の劇作家によって扱われ続けた。被爆二世、三世の人びとが存在し、また世界中で核問題が未解決であるように、原爆は今なお終わらない問題として今後も取り上げら
れるだろう。