enpaku 早稲田大学演劇博物館

第5章 沖縄と終わらない戦争

演劇は戦争体験を語り得るのか ——戦後 80 年の日本の演劇から——

第5章 沖縄と終わらない戦争

 沖縄戦や米軍基地問題を題材とする作品は近年でも数多く生み出されており、なかには藤田貴大『cocoon』や安和学治・國吉誠一郎作『9 人の迷える沖縄人~after’ 72~』、あるいは兼島拓也作『ライカムで待っとく』など高い評価を受けた話題作も含まれる。この背景には、1972 年まで続いたアメリカによる沖縄統治や、今なお解決しない米軍基地問題がある。沖縄という地においては特に、80 年前の戦争はいまだ終わってなどいないのである。
 本章では、比較的近年の作品に重点を置きつつ、演劇人たちが戦時下と現在の沖縄についてどのような思考を巡らせてきたか、それがいかに作品に反映されているのかを紐解く。