enpaku 早稲田大学演劇博物館

企画・特別展

早稲田大学演劇博物館 2021年度春学期常設展

特集展示:安野光雅と芝居の世界

 
画家、絵本作家、装幀家、デザイナー、エッセイストなど、多岐にわたる仕事を展開した安野光雅(1926~2020)は、演劇のチラシやポスターも手がけている。とりわけ井上ひさし(1934~2010)との交誼は長く深く、著作の装幀をはじめ、舞台の宣伝美術も数多く担当してきた。井上と安野がタッグを組んだ作品を並べると、19~21世紀の日本演劇史を一望するがごとき様相を呈している。また、松岡和子訳によるちくま文庫版シェイクスピア全集の表紙絵も安野畢生の連作で、シェイクスピア受容史の最先端にも安野がかかわっていた。演劇のグラフィックデザインといえば、1960~70年代のアングラ演劇のポスターに光があてられがちだが、安野光雅という視座から斯界を望むと、従来とは異なる光景が浮かびあがってくる。ここでは、安野光雅の画業と交遊を通して、日本演劇の近現代史をたどってみたい。

会期:2021年3月1日(月)~8月6日(金)
開館時間:10:00-17:00(火・金曜日は19:00まで)
会場:早稲田大学演劇博物館 3階 常設展/近現代
入館無料

※「来館にあたってのお願い」をご確認のうえご来館ください。
※東京都における緊急事態措置の発令、および早稲田大学新型コロナウイルス感染症対策本部の方針により、急な日程変更を行う場合がございます。最新情報は当館HPをご覧のうえご来館ください。

▼展示構成
・安野光雅と芝居の世界
・江戸から明治へ―― 黙阿弥を描く
・新劇開幕の「銅鑼」を聴く
・小沢昭一としゃぼん玉座
・忠臣蔵」の受容と変奏
・こまつ座の仕事
・松岡和子とシェイクスピア全訳
 
▼プロフィール
安野光雅(あんの・みつまさ)

1926年島根県生まれ。68年最初の絵本『ふしぎなえ』以降、独特のユーモアにあふれ、情感豊かな水彩画を次々に発表。国際アルゼンチン賞、菊池寛賞などを受賞。井上ひさしとの共作『ガリバーの冒険』ほか絵本多数。井上作品での宣伝美術はしゃぼん玉座、こまつ座の旗揚げ公演『頭痛肩こり樋口一葉』から近年の『父と暮せば』『母と暮せば』など多数。2020年12月24日逝去。

= = 安野光雅の言葉 = =
 井上ひさしの芝居の場合は〔中略〕そのポスターは、台本ができないうちから描かねばならない。劇場の確保、出演者の確保、調整、印刷の期間、などの理由からそうなる。これはきびしい条件であり、また、絵をかくものの言い逃れにもなる。「だって、台本ができていないんだから」……と。
 だから、井上ひさしの芝居のポスターは、おもしろい。
(安野光雅「ポスターはパズル」『安野光雅のポスター』岩崎書店、1998)
 電話で話して、およその構想をきき、わたしが、頭の中に、想像された、まことにあやしい幻想をもとにして描くほかない。作家の構想と言っても、まことにおぼろげで、書いているうちに、話の方向が変る可能性がある。おおいにある。無かった例のほうがすくないか、まったくない。本人の頭の中にはあったとしても、それを伝え得るのは、題名くらいのもので、その題名がよくできた場合は、「名は体をあらわす」みたいな関係で、やや了解ができるが、その題名だって、まだ流動的である。
 およそ、芝居というものはそういうものらしい。井上さんの場合だけではない。だからポスターにあたり外れができるが、まあどうもそこは許していただくほかない。
(安野光雅「ポスターはパズル」『安野光雅のポスター』岩崎書店、1998)
 
 

その他の企画・特別展