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図録

新派 SHIMPA――アヴァンギャルド演劇の水脈

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「新派」という演劇のおもしろさとは。演劇にとって“新しさ”とは何か。明治時代から生きつづける新派という演劇の相貌を問い直し、多彩なスタイルと歴史を、日本演劇におけるアヴァンギャルドの水脈に位置づけ、その現在地と未来を考える機会に。

仕様:B5判・並製・カバー装・144頁
販売価格:1,800円〔税込〕
監修:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
編著:後藤隆基・柴田康太郎
編集:原田真澄


 
本書「展示趣旨」より
「新派」という演劇のジャンルがある。明治二十年代、自由民権思想の啓蒙のために角藤定憲や川上音二郎といった政治青年たちが興した「壮士芝居」を祖として誕生、発展。歌舞伎と対抗しつつ、その影響を色濃く受けて独自の写実芸を確立した、新しいスタイルの演劇である。男女の色恋――ことに女性の情や業を濃やかに描き、時代や社会の変化の中で葛藤する人間を描いて庶民の心性に訴えてきた。しかし、新派という演劇のおもしろさは、それだけにとどまらない。幾多の名優、名作に彩られ、百三十年をこえて命脈を保ちつづけてきた歴史を繙くと、各時代の先鋭的、前衛的な舞台があった。話題性を貪欲に取り入れた舞台があった。風俗や世相への即応性は、新派の特質でもあった。それら多様な舞台や、新派を支えた文化交流の様態を検証することで、演劇がいかに時代を映してきたかが浮かびあがってくる。また、女優と女方が共存する稀有な様式も、新派独特の美学を体現するものといえよう。演劇にとって“新しさ”とは何か。むろん“新しさ”や同時代性は、新派だけの特権ではないが、一世紀以上の伝統を背負う新派に内在するアヴァンギャルド性を探ることによって、移ろう時代のなかで、変わったもの、変わらないものが見えてくるのではないか。新派の技芸や作品がいかに継承されてきたか、ジャンルそのものが今日まで残存してきた所以を考えてみたいのである。本書は、明治時代から生きつづける、新派の相貌を問い直すところからはじまる。ここに紹介するのは、厖大かつ多様な演劇のスタイルの一端にすぎないが、新派を、日本演劇におけるアヴァンギャルドの水脈の一角に位置づけ、その現在地と未来をたしかめる機会としたい。

= 目 次 =

ごあいさつ
謝辞
目次
展覧会主旨

エッセイⅠ・インタビュー
娘の知らなかった話 水谷八重子
歴史に甘えない、今、を生きること 波乃久里子
新派は古くならない 石井ふく子

図版篇
第一章 明治演劇のアヴァンギャルド
第二章 多様なる劇世界をめぐる
第三章 映画と新派と交差
第四章 目呟く衣裳の魅力
第五章 戦後新派の脈動
第六章 新派の現在地

エッセイⅡ
誤諺の新派史 大笹吉雄
新派のこと少し 矢野誠一
喜多村緑郎のレゾンデートル 渡辺保

論考篇
新派とアヴァンギャルド的なるもの――「奇を好み新を悦ぶ人心」の在処 後藤隆基
歌舞伎と新派の間には 児玉竜一
古典演劇と近代の戦争劇――前衛から古典へ 原田真澄
新派映画の複層性――舞台/連鎖劇/映画 柴田康太郎
新派の音楽、新派の音 土田牧子
新派の視覚装置 神山彰

新派略年表
主要参考文献
展示リスト
奥付

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