enpaku 早稲田大学演劇博物館

イベントレポート

2024年春季特別展関連イベント

「坪内逍遥×坪内逍遙―『文豪とアルケミスト』から辿る文豪たちの世界」イベントレポート

  特別展「文豪×演劇―エンパクコレクションにみる近代文学と演劇の世界」関連イベントとして、文豪転生シミュレーションゲーム「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)のゲームプロデューサーである谷口晃平氏をお招きし、座談会を行った。今回の展示では同ゲームとタイアップを行っており、演劇博物館創設者の坪内逍遙のキャラクターである「坪内逍遥」の描き起こしイラストの展示をはじめとして、多数の企画を行っている。

『文豪とアルケミスト』から辿る文豪たちの世界 イベントレポート
谷口晃平氏

 座談会では、谷口氏より「文豪とアルケミスト」について、ゲームの概要や文豪同士の関係性を重視した作品であることなど、基本的な点について伺ったうえで、「坪内逍遥」のキャラクターについてお話を伺った。児玉館長から実在の坪内逍遙の生涯などを紹介しつつ、他の文豪たちとの関係などについて話が広がった。また「文豪とアルケミスト」はゲームのみならず、アニメ、2.5次元舞台(通称文劇)と幅広く展開している。ゲームがコンテンツとして様々な領域に広がっている現在の様相について、それぞれの違いや、文豪というテーマが持つ可能性なども含めお伺いした。

 谷口氏は文学の面白さをプレイヤーにも感じてもらえるようなゲームを制作したいと本作の企画を立てられたそうだが、「文豪とアルケミスト」を契機として、過去の文学作品が再販されたり、新潮社から『「文豪とアルケミスト」文学全集』が発売され話題を呼ぶなど、ゲームを起点とした波及効果が次々と起きている。大学においても、「文豪とアルケミスト」をきっかけに近代文学に興味を持ったという学生も少なくない。まさにゲームが引き金となり新たな興味関心を喚起していると言えよう。谷口氏は、「文豪とアルケミスト」で文学を好きになる人が増え、やがてそのなかから学芸員や研究者が生まれたら嬉しいと語っており、さらなる可能性が示された。本展示でもタイアップがきっかけで来館される方が多く、これまで当館を訪れたことのない方々にもアピールができたと考える。当日の参加者からは熱心な感想を多数お寄せいただき、改めて「文豪とアルケミスト」の持つ力について感じることのできるイベントとなった。

第86回逍遙祭 イベントレポート
左から赤井紀美准教授(東北大学)、谷口晃平氏、児玉竜一館長(早稲田大学演劇博物館)


▼ イベント詳細
坪内逍遥×坪内逍遙―『文豪とアルケミスト』から辿る文豪たちの世界

【執筆者】
赤井紀美(あかい・きみ)

東北大学文学研究科准教授。日本女子大学文学研究科博士課程前期終了。学習院大学人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助教を経て2024年4月から現職。専門は 近世後期から近現代の日本演劇・芸能と文学。