昭和19年に創設され、80周年を迎える劇団俳優座から、昭和23年に研究生として俳優座に入団された岩崎加根⼦さんを中心に、各年代の座員の皆様にお越しいただいた。岩崎さんからは俳優座養成所が作られた当時についてや、昭和29年に開場した俳優座劇場について貴重なお話を伺った。当時のお話のなかで中野さんが劇団歌の一節を歌われ、熱意溢れる歌声に会場は大いに盛り上がった。岩崎さん、中野さんはじめ当時の俳優座の座員は映画や放送においても活躍されたが、その成果が俳優座劇場の建設につながったという。映画出演時の興味深いエピソードが次から次に飛び出した。
昭和55年に俳優座劇場は改築されるが、杮落しに際し、劇作家の田中千禾夫が「祝い文」という文章を贈ったという。貴重なこの文章を岩崎さんが朗読くださったが、御年90歳を超えながらも、現役の女優として活躍される岩崎さんの朗読には会場一同圧倒された。劇団俳優座と俳優座劇場の歴史を、新劇の越し方とともに言祝ぐ「祝い文」を聞き、俳優座の成し遂げてきたものの大きさを改めて感じることが出来た。
朗読する岩崎加根子さん
続いて、大盛況だった「慟哭のリア」(2024年11月)のお話や次回作の田中千禾夫作「教育」(2025年2月)について、現在ご活躍の世代である⻫藤さん、瑞⽊さん、野々⼭さんから伺った。先輩達からの想いをどのように受け継ぐのか、次の世代が真摯に受け止めそれぞれが向き合っている姿が印象的だった。また、登壇予定の塩山誠司さんが残念ながらご体調不良により欠席されたが、代わりに有馬理恵さんにご登壇いただいた。80周年を迎え、劇団全体が一丸となって前を向いて進む姿が頼もしく、新たな劇場の建設も期待される。
左から有馬理恵さん、斉藤淳さん、館長、岩崎加根子さん、大笹吉雄さん、瑞木和加子さん、野々山貴之さん
▼ イベント詳細
築地小劇場100年と俳優座―劇団俳優座80周年と俳優座劇場70年の歴史をふりかえって―
赤井紀美(あかい・きみ)
東北大学文学研究科准教授。日本女子大学文学研究科博士課程前期終了。学習院大学人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助教を経て2024年4月から現職。専門は 近世後期から近現代の日本演劇・芸能と文学。