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イベントレポート

早稲田大学演劇博物館 イベントレポート

演劇博物館初となる野外上映会を開催「エンパクシネマ」

日時:2017年10月24日(火)18:30 開演(18:00 開場)
会場:早稲田大学演劇博物館
出演:映楽四重奏 The Film Quartet

 イベントレポート

2017年10月24日(火)、文化庁補助金事業「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」の一環として、演劇博物館初の試みとなる正面舞台を利用した野外上映会「エンパクシネマ」が開催されました。前日に大型台風の関東上陸があり、野外での開催が一時危ぶまれましたが、蓋を開けてみれば当日は台風一過の快晴。野外上映会には最適の天候に恵まれました。秋も深まり、夜はやや冷え込む時期であったにもかかわらず、会場となった演劇博物館周辺には立ち見も含めて400人以上の人々が集まり、大盛況の中で上映会は開催されました。

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今回上映された作品は、いずれも1916年(大正5年)に製作された無声映画であり、映画を彩る伴奏音楽と活動写真弁士(弁士)がそこに加わりました。演奏を担当した「映楽四重奏 The Film Quartet」は弁士の片岡一郎氏を中心に、宮澤やすみ氏(三味線)、上屋安由美氏(ピアノ)、田中まさよし氏(太鼓)の4人によって結成され、世界各地の映画祭に出演するなど、現在国際的にもめざましい活躍を展開している無声映画のための演奏集団です。

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はじめにチャップリンの傑作短編『チャップリンの消防夫』が上映されましたが、弁士の片岡氏による絶妙な語りと相まって、会場からは大きな笑いが何度も沸き起こりました。そしてプログラムのメインは『生さぬ仲』と『雷門大火 血染の纏』という、演劇博物館がフィルムを所蔵する戦前の日本映画。特に、「目玉の松ちゃん」の愛称で知られる当時の大スター・尾上松之助が主演する『雷門大火 血染の纏』は、この時期の日本映画としては例外的にほぼ完全なバージョン(上映時間約45分)が奇跡的に現存している大変貴重な作品です。随所に現れる松之助の派手な立ち回りシーンでは、ピアノ、三味線、太鼓の大合奏がそのアクションを盛り上げることで作品の潜在的な魅力が存分に引き出され、大迫力の画面が見る者を圧倒させていました。

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上映後の来場者アンケートには「エンパクシネマ」の定期開催を望む声が多数寄せられました。現在、演劇博物館は来年の創立90周年に向けた準備のため長期休館中。収蔵資料の調査・整理や建物のメンテナンス、常設展示の大幅な刷新などを行い、2018年3月23日(金)にリニューアルオープンします。「エンパクシネマ」も、生まれ変わった新しい演劇博物館の下で、是非第2弾の開催を実現したいと思います。

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 出演

映楽四重奏 The Film Quartet
片岡一郎(活動写真弁士)、宮澤やすみ(三味線)、上屋安由美(ピアノ)、田中まさよし(太鼓) により活動写真を中心に語りや音楽といった娯楽の最も重要な要素を幅広くカバーするユニットとして2015年に結成された。活動写真館で生み出された日本独自の演奏形態である和洋合奏の技法を学び、新たな魅力を現代に発信するスタイルは国内外で評価され活躍の場を広げている。

 上映作品

『チャップリンの消防夫』(1916年、24分)
『生さぬ仲』(1916年、15分)
『雷門大火 血染の纏』(1916年、45分)