会場:早稲田大学演劇博物館舞台前
2018年10月8日(月・祝)、開館90周年を迎えた演劇博物館の前舞台を活用した野外映画上映会「エンパクシネマ」第2弾が開催されました。相次ぐ大型台風の影響により当日午後まで天候が危ぶまれましたが、映画上映を心待ちいただいた来場者の熱気によって芸術の秋に相応しい夜空に恵まれました。第1回以上の好評を博し、会場となった演劇博物館周辺から歩道にまで立ち見を含めて570名以上の人々にご来場いただくことができました。
開場前から多くの皆さまにお待ちいただきました
出演者によるご挨拶
こどもから大人まで、会場はたくさんの方の笑い声にあふれました
今回の上映プログラムは、無声映画専門で約1,000本作品のフィルム・アーカイブを有するマツダ映画社の協力のもと、コメディを中心に1920年代から1930年代に製作された5本の無声映画で構成しました。上映された無声映画は、国内外で活躍する柳下美恵氏のピアノ伴奏に加え、活動写真弁士の澤登翠氏と山城秀之氏による解説によって華やかに彩られました。
活動写真弁士の澤登翠氏と山城秀之氏
ピアニストの柳下美恵氏
はじめにラリー・シモン主演の短編喜劇『ラリーのスピーディ』と戦前日本のアニメーション『日の丸太郎・武者修行の巻』が上映されました。山城氏の軽快な語りで会場に笑いが沸き起こるなか、子供たちも大きな声で笑っていたのが印象的でした。続いてプログラムの後半は『血煙高田の馬場』、『虚栄は地獄』、『子宝騒動』を上映し、現代の活動写真弁士を代表する澤登氏の力強い巧みな語りが来場者の視線をスクリーンにしっかりと釘付けにしつつ、臨場感溢れる笑いの空間を築きあげました。さらに、柳下氏によるピアノ演奏は、映画、弁士の語り、そして鈴虫の声と溶け合いながら秋夜の演劇博物館を艶やかに包み込みました。
巨大スクリーンでの上映と臨場感あふれる演奏は、まさにライブ体感
演劇博物館前が一夜限りの特別空間に
文化庁補助金事業「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」の一環として開催された今年度のエンパクシネマでは、特に若年層が日本の映像文化に触れ、楽しむきっかけ作りを企画の重心に置きました。その試みの一つとして、今回の選定作品はすべて貴重な16ミリフィルムで上映し、映写技師が映写機を扱う様子や映写機の音も上映の一部として体験していただきました。その結果、上映後の来場者アンケートには、第3回目の開催を期待する声だけでなく、色々な世代の観客が笑いを共有できたことが楽しかったという声が多数寄せられました。映像文化の魅力をさらに発信できるよう、ぜひ開催の継続を目指したいと思います。
文責:演劇博物館助教 久保豊
澤登翠(活動写真弁士)、山城秀之(活動写真弁士)、柳下美恵(ピアニスト)
1.『ラリーのスピーディ』(制作年詳細不明)[10分]
2.『日の丸太郎・武者修行の巻』(1936年、三幸商会漫画部)[5分]
3.『血煙高田の馬場』(1928年、日活太秦)[6分]
4.『虚栄は地獄』(1924年、アサヒピクチャー)[15分]
5.『子宝騒動』(1935年、松竹蒲田)[34分]