enpaku 早稲田大学演劇博物館

Act 1 松岡訳が出来上がるまで

Words, words, words.―松岡和子とシェイクスピア劇翻訳

Act 1 松岡訳が出来上がるまで

   Act 1 では、翻訳ノート、翻訳原稿、ゲラ、上演台本、ちくま文庫版と松岡さんの翻訳のプロセスをご紹介します。松岡さんは時に朝から晩まで書斎に籠り、シェイクスピア劇の翻訳に向き合ってきました。上演に合わせてシェイクスピア戯曲1本を訳し終えるまで約半年。手に入るシェイクスピアのテクストには出来るだけあたり、原文、編集者の注釈を読み込みます。1日に数行ずつ、コツコツと、『シェイクスピア・コンコーダンス』から『逆引き広辞苑』、『固有名詞英語発音辞典』等も参照し、訳していきます。小説・評論・現代劇などの翻訳をしていたころは原稿は手書きでしたが、今はパソコンで書きます。難解な原文は反故紙に手書きします。まずそのまま。倒置があれば順置にして、何度も何度も。松岡さんは言います、「シェイクスピアも羽根ペンにインクをつけて手書きした。思考は頭脳から手に流れるのだから、自分も手書きをすればシェイクスピアの思考を辿れるのではないか」と。シェイクスピア劇の翻訳のプロセスで、手書きは外せないそうです。原稿を担当編集者に渡し、ゲラ刷りが出ると、編集者・校正者と共に読み直し、修正を加えます。ちくま文庫の出版と、彩の国シェイクスピア・シリーズの上演台本の完成は、その時々によって順番が異なるそうです。松岡さんと一緒に書斎でシェイクスピアの言葉に向き合っている気分を味わってください。